90年代池袋のCDショップの思い出

手持ちCDのリッピングをやっていたら、ふと1990年代のCDショップのことが思い出された。いうまでもなくCDを中心として音楽ソフト全盛の時代で、当時大学生だった私は池袋界隈に生息していたが、そこは特に「CDショップ激戦区」で大型店舗が軒を連ねていた。中学、高校をろくな店がない田舎で過ごした音楽好きの青年にとって、まさに宝の山であった。

もちろん、今は見る影もない。急に懐かしくなり、誰かがブログで書いていないか検索してみたが、適当なものが見当らなかった。そこで、当時の状況――というか私の記憶――を記しておきたい。





1990年代当時の池袋には、主要なCD大型店として以下のものがあった。

  • HMV(池袋駅西口メトロポリタンプラザ6F)
  • ヴァージン・メガストア(西口丸井地下1F)
  • WAVE(東口独自ビル)
  • タワーレコード(東口P’パルコ5F、6F)
  • 山野楽器(東口西武池袋本店9F)

これらのCDショップはいずれも個性的であった。HMVは全体的に品が良くて、メトロポリタンプラザの一階を占有していたのだが、ジャズとクラシックのコーナーは他と分かれており、入口がひとつしかなく個室みたいになっていた。クラシックよりもジャズコーナーの方が敷居が高く、入るのがためらわれたのが印象に残っている。



ヴァージン・メガストアは、丸井の地下1階はほぼ占有していた。こちらは全体的に開放的で、ジャンル間の垣根を感じさせないレイアウトであったと思う。個人的には一番お世話になったお店で、店員用のCDカタログを見せてもらって輸入版を取り寄せてもらったこともあった。

WAVE はさすがに独特の雰囲気を放っていた。本屋のリブロ(最近閉鎖にニュースがありましたね)のすぐ前のビルにあったのだが、中が薄暗くていかにも「アングラ」という雰囲気が漂っていた。ここでは洋楽をよく探したな。なお、下の写真は西武本店へ移転後のものだが、旧 WAVE はもっともっと暗かった(印象がある)。



タワーレコードは後発で、1994年にP’パルコ(ピーダッシュパルコ)ができてから通い始めた。すぐ上に石橋楽器があるので立地はよいのだが、クラシックコーナーが小さいので、あまり利用しなかった。最後の山野楽器は、西武のかなり高い階にあるので、はてしなく遠い印象しかない。

基本はこれらの店舗をはしごして、欲しいCDを探したり、新しい発見があったりと、ゆうに半日は潰れた。いまでは絶対にできない遊びで、まあ楽しかったわけですよ(当然、パソコンや携帯電話はもってなかった)。店側はそうした移り気な客を囲うために「ポイントカード」をちらつかせた。換金率も(現在のTポイントカードとかに比べると)結構よくて、「ボーナス」で買えるCDを選ぶために、さらに小一時間ほど漁ったりした。



現状はご存知の通りで、2000年以降のCD不況の影響でだいぶ様変わりしてしまった。一番お世話になったヴァージン・メガストアは丸井のB1Fから近くの店舗(現パチンコ屋)に移転し、その際、輸入CDの取り扱いを止めてしまった。それ以降は行ってないので記憶はない。調べてみると、いったん丸井の8階に戻り、2009年のヴァージン・メガストア全店舗閉鎖に伴い消滅したようである。

WAVE は2009年1月12日に閉鎖したらしい(このブログとコメントを参照)。なお、WAVE 自体も2011年に破産申請をしている。

輸入盤を取り扱わなくなったヴァージン・メガストアの亡き後は、HMV がおもな購入先となり、数年はお世話になった。ここのクラシックコーナーは、古楽やバロックも充実しており、小さいが書籍コーナーもあってよかった。しかし、ここも2011年に売り場を大幅縮小し、クラシック・コーナーの敷地に全ジャンルが統合される。当然、輸入版などを置くスペースはない。これで池袋におけるクラシックCDファンの最後の砦が陥落した。

よって、池袋で今でも「大型店」という名に相応しい規模を維持しているのは、タワーレコードくらいであろう(ここ数年行っていないので、実際はよく分からないが)。



かつていた多くのCD購入層と同様に、私もCDショップから足が段々と遠のき、年に数枚買う程度になってしまった。欲しい時は新宿のタワーレコードにも行くが、基本は Amazon である。作曲家ごとの格安 Box セットが買えるのは、1990年代当時はなかった楽しみだ(まあ、そういうのは買っても聴かないのだが)。

自分は業界関係者でも何でもないので、「CD不況」や「音楽離れ」についてアレコレ言うつもりはない。その時々に合った音楽の楽しみ方がある筈なので、現在は現在のやり方で楽しめばよいと思う。ただ、自分が若かったというのももちろんあるが、90年代のCDショップは楽しかったなぁとしきりに思う次第である。